Y&E LAW・CONSULTING 上海外安伊企業管理諮詢有限公司

 今年5月以降、中国で頻繁に起きているストライキのニュースを拝見すると、賃金アップ、福利厚生の充実、職場環境の改善などを訴えて工員がストライキを起こしていると書いてある。

 

仕事がら日系企業のストライキ対応サポートをさせて頂くことも多いが、その中で感じるのは、最近はストライキに参加する出稼ぎ工員の世代交代が起きていることだ。これまでの主要メンバーであった6070年代生まれの工員達は、出稼ぎで稼いだカネを、実家に送金し、将来の生活のために貯金していた。職を失うことを怖がり、それなりに辛抱強く働き、よほどのことがない限りストライキを起こしたりはしなかった。

 

しかし現在工員の大多数を占める80年代後半、90年代生まれの若者は違う。彼らは消費力旺盛で実家にお金を送金するどころか、生活費が足りずに、実家からお小遣いを送金してもらっている人もいる。こういう若者は欲しいもの、買いたいものがいくらでもあるので、会社がいくら給料を上げても満足しない。ストライキを起こして給与が100200UPを勝ち取ったら、もう1度ストライキを起こしてもっと給与を上げようと思うだろう。また会社にとって都合が悪いことに、こういう若い工員達は、会社をクビになること、しばらく職がみつからないことを屁とも思っていないことだ。実家から仕送りをもらっているので、嫌な職場で働くくらいなら、しばらく無職でプラプラ過ごしている方がいいと考えている。こういう若い工員が相手なので、残念ながら「100%ストライキを防ぐ方法はない」ということを前提に考えた方がよいだろう。

 

ストライキ対策として会社がやれることは、(1)ストライキの発生確率をできるだけ減らす努力と、(2)いざ起こった時の「事前」準備をしておくことだろう。(1)としては、日頃から工員達の本音を聞く機会を作り、ガス抜きをすることに尽きる。部下の中国人中間管理職が自分の都合を考慮して上げてくる偏った情報を待つだけでなく、積極的に従業員の「本音」を聞く機会を作るべきだ。従業員の要求がリーゾナブルかつ実現可能であれば、即対応することで、従業員の対会社への印象も大きく変わるだろう。

 

(2)の事前準備としては、ストライキ発生を想定した「対応マニュアル」を作ることをお勧めしたい。対応マニュアルを事前に作成することで現法日本人経営者、中国人幹部の心の準備になるだけでなく、日本本社等とも共有することでストライキ発生時にスムーズに対処できる。弊社で販売している「ストライキ対応マニュアル(2010版)」がとても好評を得ている。このマニュアルには、(A)ストライキ発生初期、発生後の時系列対応フローチャート、(B)ストライキに対応する社内体制、役割分担、(C)ストライキ発生を未然に防ぐ労務管理、などが詳細に記されている。

 

また、マニュアルにも詳しく書いてあるが、ストライキの対応で一番大切なのは、まず従業員が最初に騒ぎ始めたときに行う会社としての「1次対応」だ。この対応次第で、ストライキにならずに収まるか、業務が止まるストライキになるか決まる。しかし、勘違いしてはならないのは1次対応の目的は「騒ぎを起こした従業員を説得して、その場でストライキを解決させること」ではなく、「騒ぎをこれ以上大きくさせないこと」と「騒ぎの真の原因を掴むこと」にある。頭ごなしに怒らずに、まず相手の言い分を聞くことに徹することだ。給与UP要求の裏に隠された従業員の真の要求を掴まなければ、問題を解決することはできない。その他にも1次対応で気をつけるべきこととして、録音機を使う、変な約束はしない、一旦現場から離れて会議室等で話をする、などもある。また1次対応を担当する中国人管理職は、事前のトレーニングも必要だろう。(ご興味があれば、弊社までご一報ください)

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