Y&E LAW・CONSULTING 上海外安伊企業管理諮詢有限公司

前回の「協議による労働契約解除」の話では、会社からクビにされることを察知した従業員が取りえる戦略として(1)自分個人と会社の問題ではなく、従業員全員対会社の問題にする、(2)会社の弱みに付け込む、の2つを取ってくる可能性があることを書いた。今回は、敵がそういう作戦を取ることを前提に、こちらも事前に準備しておこうという話をしよう。

 

こちらが事前準備としてやるべきことは、できる限り「敵」(解雇する従業員)の情報を集めることだ。敵にクビにしようと考えていることを悟られる前に、敵が取り得る手段、逆にこちらが敵に対して使える手段を調査するのだ。

 

では、この調査で何を調べればよいのか。

 

弊社がお客様からクビ切りのサポートを依頼された場合には、敵に関して、「家族・親戚」、「学歴・職歴」、「周りの従業員との関係」、「従業員が行った過去の不正行為」、「従業員が知っている会社の弱み」の5つの情報を調査してもらうことにしている。

 

では、以下それぞれの調査項目について説明しよう。

 

・家族・親戚

まずは、敵の家族・親戚が社内にいるかどうかが重要だ。家族・親戚が社内にいたとしても、その家族・親戚たちは、敵とは違い、会社にとっていい従業員かもしれない。ただし、敵と会社が一旦対立関係に入ったとたんに、その家族・従業員は(ある意味当たり前だが)ほぼ間違いなく敵側につく。したがって、場合によっては、敵だけでなく、社内にいるその家族・親戚もまとめて解雇にすることを覚悟しておかなければならない場合もあるだろう。特に社内にいる敵の家族・親戚が、税関、会計・税務、人事・総務といった部門にいたり、部門長もしくは、他の社員の信頼が厚くまとめる力がある人だった場合にはやっかいなことになるだろう。

 

その他に、親がどこに住んでいるか、敵が会社周辺にマイホームがあるか、なども重要な要素となる。敵のマイホームが会社周辺にあったり、親も同じ街に住んでいる場合には、敵は会社を退職後も、その地域に残るので、あまり評判が悪くなることをできない可能性が高い。ただし、あまり敵の面子を潰してしまうことをすると、逃げ場がなくなった敵が噛み付いてくる可能性もあるので注意が必要だ。敵が田舎の老家から出稼ぎに出てきている場合などは、その逆の発想で考えればよい。

 

敵の両親には別の使い方がある。労働契約解除の協議になったときに、敵があまりにも理不尽なことを言い続けた場合に、「いい加減にしないと、会社から老家の両親に手紙を送り、お前の悪事をばらすぞ!」というと、相手が譲歩する場合もある。ただし従業員に脅しをかけるのを飛ばして、先に敵の両親に、会社から不幸の手紙を送ってしまうと、「面子を潰された」ということで、後で手がつけられないくらいキレられることがあるので注意が必要だ。

 

だらだらと書いていたら、また紙面が足りなくなったので、続きは次号で。

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