Y&E LAW・CONSULTING 上海外安伊企業管理諮詢有限公司

今回も、クビ切りの話の続き。前回掲載した「上司の言うことを聞かずに、クビにされるのを待つ従業員」の話ではないが、日本人としての常識と感情だけで、従業員をクビにしてしまうと、後で痛い目にあう。まず先に、従業員をクビにする方法にどんなものがあるか、それぞれの方法にどんなメリット、デメリットがあるのか理解することが先決だ。そこで今回は、従業員をクビにする方法(正確に書くと、従業員との労働契約を解除する方法)を整理してみよう。

 

中国で、従業員との労働契約を解除する方法は、大きく分けて5つある。

 

最も会社にとっていい方法は、「(1)従業員自ら自主退職」してくれること。ただし中国人従業員もバカではない。辞職した場合には、経済補償金はもらえないことを知っているので、例え会社を辞めたいと思っていても、なんとか会社側から言い出してもらおうと画策するのが、普通だ。

 

従業員自ら辞職しないとなると、会社から引導を渡さなければならないのだが、その中で一番会社側にとって簡単なのが「(2)契約期間満了」によって、労働契約を解除すること。これを使えば、「会社が契約を更新したくないから」という理由だけでクビにできる。しかし実際には、この最も簡単な方法をうまく活用できていない企業が多い。社員が何十人、何百人といて、契約更新日がバラバラの場合、気づかないうちに自動的に契約を更新してしまうことが多いからだ。「前から問題ある従業員を近々クビにしたいのですが」と弊社が相談を受けるケースの中で、その従業員の労働契約が、つい数ヶ月前に更新されている(=数ヶ月前の時点で、契約を更新しなければもっと楽に労働契約を解除できた)ということもよくあるので注意が必要だ。

 

次は、「(3)合法的に解雇」すること。就業規則重大違反や、業務を全うできないこと等を客観的に証明できれば従業員の意向とは関係なく会社の意思で合法的解雇できる。しかしこの「客観的に証明すること」が曲者で、実際このオプションを使えないことが多い。

 

そして4番目が「(4)違法解雇」。違法なことは本来やってはいけないのではあるが、そのリスクを承知した上で、どうしても違法解雇に踏み切らざるを得ない場合も実際にはある。違法解雇をして、従業員を即刻会社から追い出した場合、その従業員は99%労働仲裁を起こしてくる。そして会社は必ず負ける。その結果従業員は、「通常の2倍の経済補償金をもらう」か「職場に復帰する」の好きなほうを選べる。

 

最後が「(5)協議による労働契約解除」。これは、会社が最も良く使う方法で、かつ一番面倒な方法だろう。これについては次回詳しく説明したい。

▲ ページTOP へ戻る