Y&E LAW・CONSULTING 上海外安伊企業管理諮詢有限公司

前回までは、税関側から企業の違反行為を指摘された事例を説明したが、今回は企業側から積極的に、違反と疑われる可能性のある行為について税関に説明して、お墨付きをもらった話を紹介しよう。

 

ある外資系大型機械メーカーから、「自社の中国事業再編に際して、各事業の税関業務が正しく行われているかどうか診断して欲しい」という依頼が、弊社税関担当弁護士にあった。

 

その診断の結果、この外資系メーカーがこれまでに行った200件の部品輸入取引に関して、脱税行為と判断される可能性があることが判明した。この外資系メーカーが、スペアパーツ等として輸入した部品が、たまたま全部集めると完成品を作ることができるというのがその理由。完成品として輸入するより、部品としてバラして輸入した方がトータルの関税は低くなるため、これを意図的にやっていたとした場合には、脱税行為と判断される可能性があるのだ。

 

まだ税関からは何も言われていないが、もし税関に意図的な脱税行為と判定された場合には、3,000万元の罰金だけでなく、経営陣も刑事罰に問われることになることが分かった。

 

さて皆様が、この会社の総経理だったら、どうするだろうか。

 

この外資系メーカーが取ったのは、自分達が脱税行為をしていない証拠を集めて、積極的に税関に説明するアプローチ。弊社税関専門弁護士の協力のもと、当該200件の部品輸入取引に関して、契約、部品の組み立て・販売状況などの違法性を調査した。また、当該200件の部品輸入取引は、脱税行為と判定される用途では使っていないことを示す証拠も丹念に集めた。そして、その結果をまとめた報告書を税関に持参し、協議を行った。

 

その結果めでたく、当該200件の部品輸入取引の合法性を税関に認めてもらうことができた。

 

「何も、税関に見つかっていない案件まで、わざわざこちらから出向いて自供しなくてもよいのではないか、そんなことしたら逆に探られたくない腹も探られる」と思われる方もいるかもしれない。ただし、万が一見つかった場合の経営に与えるインパクトの大きさによっては、発覚しないことを神に祈るという他力本願的なアプローチよりも、積極的に堂々と無実を訴え、将来の憂いを失くすというアプローチの方がよい場合もある。

 

そもそも、専門性の強い税関業務に関しては、社内の通関担当者の俗人的なやり方に陥りやすい。そして信頼して任せている社内の通関担当者も、日々変わる税関のルールに全て精通していない可能性もある。専門家に相談しながら、「定期的に」社内の税関業務を診断し、合法性を担保しておくことも必要だろう。

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